奉納俳句選評
特選
むささびの声遙かより月の宿 乗田 眞紀子
「むささび」は一年中いるが、秋から冬にかけてよく鳴くので、俳句では冬の季題とする。
夜行性といっていい。
邯鄲に導かれつつ御師の宿 関 迪子
御岳では「邯鄲の声を聞く会」が開催されていたが、現在ではどうなっていようか。
美声で名高い。
尉鶲来鳴き夕日の御師の里 鈴木 久美子
「尉鶲」(じょうびたき)は冬の渡り鳥。中国などで繁殖し、冬鳥としてわが国の各地に渡来する。
街中の公園などでも鳴き声を聞くこともある。
御師の宿茅葺き屋根に春の雪 遠藤 康雄
関東地方では二月・三月になってから大雪の積もることがある。
山では一層そうした現象が起こることが、多いかもしれない。
むささびの飛びて参道月明り 津布久 信雄
御岳のケーブルカーを降りて鳥居をくぐると、神社までがいわば「参道」である。
月夜に誘われて、宿から「参道」に出ると頭上近くを「むささび」の飛ぶ姿を見かけたりもする。
選者吟 講宿の引き水の鳴り十三夜 岡田 日郎