奉納俳句選評
特選
一席 聳えたる鳥居をくぐり初詣 宮腰 秀子
御嶽神社の本殿まで「鳥居」はいくつあるのであろうか。立派な大「鳥居」もある。実景に即して「初詣」の季題とみごとに合致した。
二席 むささびの千年欅に顔を出す 遠藤 タカ子
「千年欅」と呼ばれる古木は、御嶽神社のシンボルの一つであろう。「むささび」やりすの住み処でもある。俳句では冬の季題であり、日暮れころになると巣穴から「顔を出す」こともある。
三席 鶯の絶えずどこかに御師の里 辰巳 行雄
神社や講宿の近くでは春から夏にかけて「鶯」がよく鳴く。山中に餌となる昆虫などが豊富にあるからであろう。「鶯」は駒鳥・大瑠璃とともに日本三銘鳥の王者である。
四席 頂きの岩に根を張り白やしほ 津布久 信雄
「白やしほ」は白八汐つつじのこと。たしか奥社の「岩に根を張り」晩春にはみごとな白花が咲く。白花はことのほかきよらかな趣があるといっていい。
五席 むささびの棲むてふ欅風花す 千家 妙子
「花風」は冬の青空にちらつき「むささび」の「棲む」地上の千年「欅」の回りにもちらちらと舞う。余分な語がなく要点を印象鮮明に表現して成功した。